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第28話 あなたは逃げなかった④

Author: 花柳響
last update publish date: 2026-06-23 18:01:48
 その言葉を口にした瞬間、喉が熱くなった。

 車輪の小さな音が、言葉のあとに遅れて残った。

 泣きそうになったわけではない。ただ、自分の中にそんな言葉が残っていたことに驚いた。

 律は、私をじっと見ていた。

「……では、あなたが困らない形を探します」

 律の返事は短かった。でも、今回はそこに、迷った末の余白があった。余計な慰めを足されるよりは息がしやすかった。

「当日の装いについては、こちらで手配いたします」

 相良さんが別の薄い書類を取り出しかけた。

 私は反射的に首を横に振った。

「待ってください」

 二人の視線がこちらへ向く。

 大したことではない、と言えばそうなのかもしれない。けれど、指先に小さな棘が残ったように、落ち着かなかった。

「何から何まで用意されると、また、飾られてる気がします」

 言ってから、少し強すぎただろうかと思った。

 でも取り消せなかった。

 如月家で着せられた服の重さを、私はよく覚えている。似合うから、と渡されたもの。家の顔だから、と選ばされたもの。未央が来てからは、私に残された色まで、少しずつ遠慮の形になっていった。

「手
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